空間の歪みや現実の崩壊を描く表現は、映像表現の金字塔からも強い影響を受けている。今敏監督のアニメーション映画『パプリカ』で見られた、夢と現実の境界が溶け出すような万華鏡的ヴィジュアル。あるいは、クリストファー・ノーラン監督の映画『インセプション』における、街自体が折れ曲がる折り紙のような重力無視の空間構造。これらは現代のイラストレーターにとっても大いなるインスピレーションの源泉だ。
一枚の静止画の中に『パプリカ』のような眩暈(めまい)や『インセプション』のような多重構造の空間を作り出すこと。動画ではないからこそ、視聴者の脳内で動きが補完され、無限の奥行きが生まれる。フレームの中に閉じ込められた多次元のドラマが、見る者の想像力を激しく揺さぶる。