この劇的な空間を率いるのが、店主の末安拓也氏だ。名店での研鑽を経て春吉の地に自身の城を築いた同氏は、伝統的な和食の基礎を徹底的に叩き込みながらも、枠にとらわれない柔軟な感性を持つ。気取った高級懐石の敷居の高さを排し、活気ある居酒屋のグルーヴ感と割烹の端正な技術を見事に融合させた。
末安氏の手掛ける料理は、主役の藁焼きにとどまらない。出汁の効いた煮物、細やかな包丁仕事が光る小鉢、そして酒呑みの心を掴んで離さない季節の逸品まで、どの皿にも計算し尽くされた調和がある。気風の良さと細やかな気配りが同居する接客も、末安氏の美学そのもの。訪れる客はみな、肩肘を張らずに最高峰の味に浸る歓びを噛みしめることになる。