「背中に長い金属を入れるのか」「二度と元通りの生活は送れないのではないか」――手術の適用基準であるコブ角45〜50度を告げられた家族は、一様に深い葛藤に直面します。
患者手記や医療機関への取材から浮かび上がるのは、思春期特有の心理的孤立です。ある元患者は手記の中で、こう吐露しています。
「夏場でも厚手のシャツを着て、背中の出っ張りを隠し続けた。体育の着替えが毎日怖くて仕方がなかった。手術痕が残ることへの恐怖と、一生歪んだ背中で生きる絶望の間で、家族と言い争いが絶えなかった」
現在広く行われている外科治療は、スクリューとチタンロッドを用いて背骨の曲がりを矯正した上で骨移植を行う「後方脊柱固定術」です。気になる脊柱側弯症手術費用ですが、手術・入院にかかる医療費の総額は300万円〜500万円超に達するものの、日本の優れた公的医療保険制度のもとでは自己負担は限定的です。
「高額療養費制度」を事前に申請して限度額適用認定証を提示すれば、一般的な所得世帯の実質自己負担額は月額8万〜10万円前後にとどまります。さらに自治体ごとの「小児慢性特定疾病医療費助成」や「子ども医療費助成制度」の適用対象となれば、実質的な窓口負担が数百円〜数千円程度で済むケースも少なくありません。
術後の生活機能についても、技術革新により飛躍的な改善が見られます。神経モニタリングシステムの発達により術中神経損傷リスクは極めて低くなり、術後数日で歩行訓練を開始、約2〜3週間で退院可能です。激しいコンタクトスポーツを除けば、半年から1年後には日常生活への完全復帰や体育の授業、将来の出産も問題なく行える症例が大半を占めています。