大規模な疫学調査において、握力と生命予後(生存期間)との間には驚くほど強固な逆相関が確認されている。国立長寿医療研究センターをはじめとする研究機関の追跡データによれば、握力が低下した高齢者ほど、筋肉量が急激に失われるサルコペニアの発症リスクや寝たきりリスクが跳ね上がることが判明している。
さらに注目すべきは、脳機能との連動性だ。手指は「第二の脳」と呼ばれるほど大脳皮質の広範な領域とリンクしている。強い握力を維持できている人は、前頭葉を中心とした血流が保たれやすく、加齢に伴う認知機能低下のカーブが緩やかである傾向が実証されつつある。厚生労働省が警鐘を鳴らす平均寿命と健康寿命の乖離を埋める鍵は、まさにこの手の中に眠っていると言っても過言ではない。