本作の根底に流れるのは、原作者・野坂昭如が生涯背負い続けた罪悪感である。野坂自身、神戸大空襲で家族を失い、幼い妹・恵子を飢餓で亡くしている。劇中の清太のように妹へ優しく接することなどできず、配給の食糧を自分が奪って食べてしまったという消えない後悔。その贖罪として執筆されたのが、直木賞を受賞した短編小説『火垂るの墓』だった。
この重厚な私小説を映像化するプロジェクトを後押ししたのが新潮社だ。同時上映された『となりのトトロ』の牧歌的な温もりと、『火垂るの墓』の圧倒的な絶望。対極にある二作を同時に世へと送り出した出版社の英断は、映画史における伝説として語り継がれている。