タケモトピアノのCMを不朽の名作たらしめた最大の功労者は、昭和の名コメディアン・俳優である財津一郎さんです。タケモトピアノの竹本功一会長からの熱烈なオファーによって実現したこのCMには、財津さんの芸人魂とサービス精神が凝縮されていました。
耳から離れない「ピアノ売ってちょ〜だい!」「電話してちょ〜だい!」「もっとモ〜ット、タケモット!」という歌詞や節回しは、当初の絵コンテや台本に細かく指定されていたものではありません。撮影現場で財津さんが自身の往年のギャグ「〜してちょうだ〜い」を即興で織り交ぜ、アドリブを重ねる中で完成したフレーズでした。
歴代のタケモトピアノCMには、主に以下の2つの代表的バージョンが存在します。
- 「もっともっと篇」(アップテンポ版):全身タイツのダンサーたちと財津さんが激しくステップを踏みながらコミカルに歌い上げる、最も認知度の高いバージョン。
- 「みんなま〜るく篇」(スローテンポ版):落ち着いたワルツ調のメロディで、「ピアノ売ってちょーだい、みんなまーるくタケモトピアノ」と優しく歌いかけるバージョン。
なぜこのCMは、画質の粗いスタンダード画角(4:3)のまま、2000年代初頭から20年以上の長きにわたり一度も撮り直されることなく放送され続けたのか。その背景には、タケモトピアノ側の確固たる経営判断がありました。画質をHDや4Kにデジタルリマスターして撮り直すと、微妙な音のニュアンスや周波数バランスが変わり、「赤ちゃんが泣き止まなくなってしまうのではないか」という子育て世代への配慮があったと伝えられています。視聴者からの「変えないでほしい」という膨大な要望が、異例の長期放送を支えていたのです。