若島津の驚異的な回復を語る上で欠かせないのが、妻である高田みづえさんの存在です。1985年の結婚引退後、松ヶ根部屋および二所ノ関部屋のおかみさんとして数十人規模の力士たちの生活を切り盛りしてきた彼女は、夫が倒れたその日から介護者として最前線に立ち続けました。
集中治療室(ICU)での長期入院中から、みづえさんは連日病室に通い詰め、夫の耳元で家族の声や思い出の音楽を聴かせ続けるなど、五感を刺激する働きかけを根気強く継続しました。公にされた当時の手記や親族の証言によれば、意識が戻った後も嚥下(えんげ)訓練や手足のマッサージに付き添い、決して弱音を吐くことなく夫の再生を信じ抜いたといいます。
専門施設へ完全に入所させる選択肢もありながら、環境の変化による認知機能の低下を防ぐため、自宅をバリアフリー改修して在宅療養へ移行させた判断も功を奏しました。プロの理学療法士やケアマネジャーと密に連携しながら、無理のないペースで食事や運動のケアを徹底する姿勢は、介護医療の関係者からも極めて高い評価を集めています。