物語の中盤以降、炭治郎は水の呼吸から自身の家系に伝わる神楽舞、すなわち「日の呼吸(ヒノカミ神楽)」へと主軸を移していきます。この二つの呼吸にはどのような違いがあるのでしょうか。
戦国時代、全ての呼吸の祖である継国縁壱が生み出した「日の呼吸」は、あまりにも強力かつ個人の身体能力に依存する究極の剣技でした。そのため、縁壱は当時の隊士たちそれぞれの骨格や得意分野に合わせて技をカスタマイズし、枝分かれさせました。その基本五流派の一つとして成立したのが水の呼吸です。
炭治郎が水の呼吸を使い続けた際、劇中で彼自身が「自分の身体には水の呼吸が完全に合っていない」と独白する場面があります。水の呼吸は流れるような脱力と柔軟な筋肉の使い方を要求されますが、炭治郎の骨格や体質は、日の呼吸の持つ爆発的な熱量と強靭な踏み込みにこそ最適化されていたためです。
また、水の呼吸はその適応性の高さから、さらに細分化された「派生の呼吸」を生み出しました。
- 蛇の呼吸(伊黒小芭内):水の呼吸から派生。蛇のようにうねり、障害物を縫うような不可視の太刀筋を追求。
- 花の呼吸(胡蝶カナエ、栗花落カナヲ):水の呼吸から派生。視覚と柔軟性を極限まで高めた華麗な連撃。
- 蟲の呼吸(胡蝶しのぶ):花の呼吸からさらに派生。腕力の弱さを補うため、突刺に特化し藤の花の毒を注入する技術。
このように、水の呼吸は自らが優れた流派であると同時に、隊士たちの個性に合わせた多様な発展を可能にする「呼吸の母なる幹」としての役割も果たしていたのです。