ここで、天文学や気象学に触れたことのない人の多くが直面する、直感と現実の強烈なねじれ現象が発生します。前述した数値を精査すると、地球が太陽に最も近づいているのは真冬である1月上旬であり、最も遠く離れているのは猛暑に見舞われる7月上旬なのです。
ネット上のQ&AサイトやSNSの投稿を調査すると、「夏が暑いのは地球が太陽に近づいていて、冬が寒いのは遠ざかっているからだ」と無意識に思い込んでいる声が散見されます。しかし、事実は完全に正反対です。もし太陽との距離だけが気温を決めているのであれば、日本は1月に真夏日を記録し、7月に大雪が降らなければ説明がつきません。
では、なぜ距離が約500万kmも近づいている1月が寒く、遠ざかる7月が暑いのでしょうか。その答えは、距離の遠近など些細な問題にかき消してしまうほど強大な要素、「地軸の傾き(自転軸の傾き)」にあります。
地球は公転面に対して、自転の軸が約23.4度傾いたまま太陽の周りを回っています。この傾きによって、季節ごとに太陽光が地表に差し込む角度(太陽高度)と昼の長さが劇的に変化します。
- 北半球の夏(7月頃):北極側が太陽に向かって傾くため、太陽の南中高度が高くなり、日差しが真上近くから集中して照りつけます。さらに昼の時間が長くなるため、地表が膨大な熱を吸収して気温が上昇します。
- 北半球の冬(1月頃):北極側が太陽と反対方向に傾くため、日差しが極端に斜めから差し込み、エネルギーが広い面積に分散してしまいます。さらに昼の時間が大幅に短くなるため、熱の蓄積が追いつかず極寒の環境が生まれます。
太陽との距離が変化することによる地表への放射エネルギーの変動幅は約7%程度にとどまります。これに対し、地軸の傾きによる日射角度と日照時間の変化は、気温に対して数十パーセント以上の圧倒的な影響を及ぼします。人間が肌で感じる「季節の理由」は、距離ではなく偏りなく地軸の角度によって支配されているのです。