日本のポピュラー音楽界においても、「風に吹かれて」というフレーズは特別な磁場を持ち続けています。なかでも金字塔として名高いのが、1997年11月にリリースされたエレファントカシマシの16thシングル『風に吹かれて』です。
宮本浩次が手掛けた本作は、ドラマタイアップやCMソングとしても広く浸透し、バンドの代表曲のひとつとなりました。不器用な男が過去の悔恨を抱えながらも、乾いた秋風を受けながら前へと歩き出す情景描写は、同調圧力が強まりつつあった90年代後半の日本社会で戦うリスナーに強烈なカタルシスを与えました。ライブの現場で見せる宮本の鬼気迫る歌唱と魂の絶叫は、フォークの枠組を超越したロック・バラードとしての生命力を証明しています。
一方で、1993年10月に発表された森高千里の『風に吹かれて』は、全日空のキャンペーンソング(挿入歌・CMソング)として大ヒットを記録しました。旅立ちや心の軽やかさをポップかつノスタルジックなメロディに乗せた本作は、彼女特有の等身大で飾らない言葉遣いが光り、90年代の日常風景に溶け込む名曲として現在も根強い支持を集めています。