悪役商会の名を全国区に押し上げた最大の転機は、間違いなく1990年に放送を開始したキューサイの青汁CMでした。八名信夫氏が青汁を一気飲みした直後、本音丸出しの渋面で吐き捨てた「まずい!もう一杯!」というフレーズは、広告史に残る大ヒットを記録しました。
当時のCM関係者の証言によると、あのセリフは入念に練られた台本ではなく、八名氏が撮影現場で本当に不味そうに漏らした一言を、監督がそのまま採用したものだったといいます。嘘をつかない骨太な男が言うからこそ商品の健康効果に説得力が生まれ、企業側にも莫大な利益をもたらしました。
この大ブレイクを契機に、『オレたちひょうきん族』『とんねるずのみなさんのおかげです』『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』といった人気バラエティ番組に悪役商会メンバーが雪崩を打って出演するようになります。SNSやネット掲示板(5ちゃんねる等)で過去のアーカイブが語られる際も、「子供の頃、画面に出てくるだけで怖かった人たちが、粉まみれになって笑いを取っているのが最高に痛快だった」「怖いオジサンたちが実は礼儀正しくて優しいというギャップに萌えた」といった声が今なお絶えません。
しかし、このバラエティ進出は諸刃の剣でもありました。お茶の間の人気者になったことで「本業のドラマで悪役をやっても怖がられなくなるのではないか」というジレンマに直面した俳優も少なくありませんでした。それでも彼らは「まず顔と名前を売って食えるようになること、そして現場で本物の演技を見せつければいい」という割り切りを持ち、エンターテインメントの表舞台を全力で駆け抜けたのです。