本作が大人たちの涙腺を崩壊させる最大の理由は、その妥協のないあらすじと結末の重厚さにあります。物語のクライマックス、ガンバたちはノロイ一族の圧倒的な戦力の前に壊滅的な危機へと追い込まれます。そして訪れる結末は、全員が無傷で笑って帰るような安易なハッピーエンドではありません。
多くの愛すべき仲間たちが命を落とし、ヒロイン的な存在である潮路もまた、重い運命を引き受けます。ノロイを倒すために払われた代償のあまりの大きさに、初見の観客は息を呑みます。勝利の歓喜と同時に押し寄せる深い喪失感。しかし、悲痛な痛みを抱えながらも、生き残ったネズミたちは再びそれぞれの海へと旅立っていきます。
家族社会学や心理学の観点からこの物語を分析すると、ガンバたちの旅は「心理的自立(インディビデュエーション)」のプロセスそのものとして読み解くことができます。安全で居心地の良い故郷(依存の象徴)から飛び出し、理不尽な暴虐(ノロイ=破壊的な支配構造)と対峙することで、彼らは初めて自分自身の足で立つことの意味を知ります。自分を犠牲にして他者を救おうとする極限状態のなかで、登場人物たちが「依存」から脱却し、互いの痛みを尊重し合う「成熟したバウンダリー(境界線)」を築き上げていく姿こそが、現代社会で人間関係に苦しむ大人の観客の深層心理を強烈に癒やすのです。