万座毛という雄大な名称の起源は、約300年前に遡ります。恩納村誌や琉球王国の正史『球陽』の記録によると、1726年に第二尚氏王朝の第13代国王であった尚敬王(しょうけいおう)が国頭地方を行幸(巡視)した際、この地に立ち寄りました。
見渡す限りに広がる隆起サンゴ礁の平坦な緑の台地と、その先に広がるどこまでも青い東シナ海を目にした尚敬王は、その壮大さに深く感銘を受けました。そして、「万人を座らせるに足る毛(草原)」と感嘆の声を漏らして称賛したと伝えられています。「万人が座れるほど広い原っぱ」という国王の言葉がそのまま地名として定着し、恩納村を代表する誇りある名称として語り継がれることになりました。
この景勝地の代名詞となっているのが、東シナ海の激しい波濤と風化によって長い年月をかけて削り出された象の鼻岩です。高さ約20メートルの断崖絶壁にポッカリと穴が空き、まるで巨大な象が海に鼻を浸して水を飲んでいるかのような奇観を呈しています。地質学的には「琉球石灰岩」と呼ばれる多孔質の岩石で構成されており、崖の上には強風と塩風に耐える独自の植生が発達しました。この一帯の群落は「万座毛石灰岩植物群落」として沖縄県の天然記念物に指定されており、雄大な景色だけでなく学術的にも貴重な自然環境が保たれています。