「口を開けて寝ている=息苦しくて口呼吸をしている」と直感的に捉えがちですが、新生児の身体の仕組みにおいて、この認識は必ずしも正しくありません。本来、新生児は解剖学的に「完全鼻呼吸(obligate nasal breather)」と呼ばれる特性を持っています。授乳中に母乳やミルクを飲みながら同時に呼吸を続けられるよう、喉頭(のど仏のあたり)が高い位置に配置されており、構造上、鼻呼吸が極めてスムーズに行われるように設計されているのです。
では、なぜ多くの赤ちゃんが口を開けて眠るのでしょうか。臨床現場の報告から浮かび上がる新生児口呼吸原因および口が開く最大の要因は、以下の3点に集約されます。
第1に「筋肉の未発達と重力の影響」です。新生児期は口の周りを閉じる口輪筋や下あごを支えるオトガイ筋の力が非常に弱く、睡眠によって全身の筋肉が弛緩すると、頭の角度や重力によって自然と下あごが下に落ちてしまいます。特に横抱きや首が少し後ろに倒れる姿勢では、舌の付け根やあごが下がり、口がぽかんと開いてしまうケースが頻発します。このとき、唇は開いていても気道内部では鼻呼吸を維持していることが大半です。
第2に「鼻腔の狭さと分泌物の停滞」が挙げられます。赤ちゃんの鼻腔は非常に狭く、大人の小指の先ほどもありません。さらに空気中の微細な埃や温度変化、授乳時のわずかなミルクの逆流によって鼻粘膜が容易にむくみ、分泌物がたまります。これにより「ズーズー」「フガフガ」といった特有の新生児鼻づまり寝息が発生し、鼻腔の通気抵抗が高まることで、補助的に口が開いてしまう生理的な反応が生じます。
第3に「舌のポジション(低位舌)」です。上あごのくぼみに舌が密着しているのが理想的な安静時の舌の位置ですが、あごが小さく後退している新生児は舌が口の底に落ちやすく、それが気道を圧迫しないよう無意識に口を開ける反射が働くことがあります。つまり、唇が開いているからといって直ちに重篤な疾患を疑う必要はなく、生後数カ月間の発達過程で見られる一過性の形態変化であることが多いのです。