擁壁はある日突然、前触れもなく倒壊するわけではありません。内部の破壊が進む過程で、必ず表面に危険信号が現れます。現地調査で土木技術者が必ず確認する「間知石崩壊の危険性と兆候」は以下の4点です。
第一の兆候は、擁壁表面の「はらみ出し」です。壁面を横から透かして見た際、一部の石が前方へ弓なりに押し出されている状態を指します。これは背面の土圧や水圧に対し、控え寸法による摩擦力が限界に達している証拠であり、崩壊の直前段階と言っても過言ではありません。
第二の兆候は、石と石の目地に充填されたモルタルの亀裂・脱落です。目地に指が入るほどの隙間(クラック)が生じている場合、擁壁全体の歪みが進行しています。目地から白っぽい粉や液体が染み出している現象(エフロレッセンス/白華現象)も、内部に滞水している危険なシグナルです。
そして第三にして最大の警戒ポイントが、間知石擁壁の水抜き穴の機能不全です。擁壁崩壊の原因の8割以上は「雨水による水圧の上昇」と言われています。土中に水が溜まると土自体の重量が増加するだけでなく、強力な静水圧が擁壁の背面に直接作用します。
現行の法規上、擁壁には壁面面積3㎡ごとに少なくとも1箇所、内径7.5cm以上の水抜き穴を設置することが義務付けられています。しかし、昭和中期以前の間知石擁壁では、竹筒を差し込んだだけの粗雑なものや、穴の径が極端に小さいもの、最悪の場合は水抜き穴が一切存在しない事例が散見されます。
大雨の最中や直後にもかかわらず水抜き穴から水が全く排出されていない場合、内部で泥や植物の根が詰まり、擁壁の裏側が巨大なプールのようになっている危険性があります。水抜き穴から泥水が噴き出しているケースも、裏込め栗石が流失している証拠であり、放置すれば地盤の空洞化から一気に倒壊に至ります。