ここからは、家庭や現場ですぐに応用できるやめてと言ってもやめない子供の対処法と、大人の発達障害にも通用する具体的な指示の通し方を解説します。
第一の鉄則は、発達障害に否定語が伝わらない認知的メカニズムを逆手にとることです。人間の脳は、「〇〇するな」と言われた瞬間、まず頭の中に「〇〇しているイメージ」を鮮明に描き出します。「ピンクの象を思い浮かべないでください」と言われると全員がピンクの象を想像してしまうのと同様です。発達障害を持つ人は、その想起されたイメージを行動抑制機能で打ち消すことが難しいため、「走るな」と聞くと「走る」スイッチが入ってしまいます。
したがって、全ての指示は発達障害に対する代替行動の提示へと書き換えなければなりません。「何をしないか」ではなく、「今、身体をどう動かせば正解なのか」をワンアクションの肯定文で指示します。
特別支援教育および療育のコミュニケーション指導法で確立されている、発達障害の叱り方NG例とOK例および指示の通し方の具体例を以下に整理します。
【シーン1:廊下や店内を猛スピードで走り回る】
❌ NG例:「走っちゃダメ!やめなさい!」(走るイメージが強化され、止まれない)
⭕ OK例:「足の裏をペタペタつけて、ゆっくり歩こう」(歩く動作を視認させ、手をつなぐ)
【シーン2:甲高い大声を出したり奇声を上げたりする】
❌ NG例:「静かにして!うるさい!」(どの音量に落とせばよいか基準が不明)
⭕ OK例:「アリさんの声(ヒソヒソ声)でお話ししよう」または「ボリューム1(目盛りカードを指差す)にしよう」
【シーン3:他人の髪の毛や服を引っ張り続ける】
❌ NG例:「痛いから触らないで!離して!」(強い反応を求めてさらに引っ張る)
⭕ OK例:無言で手をほどき、即座に「代わりにこのスクイーズをギュッとして」と握り心地の似た代用品を手渡す
【シーン4:他人の会話に割り込んでマシンガントークを続ける(大人・子ども共通)】
❌ NG例:「今話してるから割り込まないで!」(遮られた怒りでヒートアップする)
⭕ OK例:「あなたの話は〇〇さんの話が終わった『3分後』に聞くよ。時計の長い針が『6』になるまで待ってね」(明確な順序と数値化)
ポイントは、感情を乗せずに「アナウンサーのような低めで明瞭な声」で、短く具体的に伝えることです。長々と「なぜそれが迷惑なのか」という説教を添えることは、相手のワーキングメモリを溢れさせ、最初の指示すら消滅させるため厳禁です。