「検察事務官の年収は激務に見合っているのか」という問いに対し、現役・元職員の間では配属先によって真っ二つに意見が分かれます。検察庁の業務は大きく「捜査・公判部門(刑事部、特捜部、公判部など)」と「事務管理部門(総務、会計、記録、執行など)」に二極化しており、労働環境のコントラストが極めて激しいからです。
捜査部門、とりわけ特別捜査部(特捜部)や大規模地検の刑事部に配属された事務官の日常は壮絶です。関係者の手記や退職者の証言によると、「事件着手前夜の徹底した秘匿作業」「朝6時からの数十箇所一斉家宅捜索」「何十箱ものダンボールに詰まった証拠品の押収と連日の目録作成」といったハードワークが日常茶飯事となります。被疑者の勾留期限(最長20日)が迫る緊迫した状況では、深夜まで続く取調室の立ち会いや調書作成補助に追われ、日付が変わる前の帰宅すら困難になる週が続きます。
ここで問題となるのが超過勤務手当(残業代)の支給実態です。制度上は残業した全時間が支給対象となりますが、検察庁の予算には上限が定められており、月間100時間を超えるような突発的超過勤務が発生した際、かつては一部で「予算上限による不払い(いわゆるサービス残業)」が噂された時期もありました。近年は労務管理のデジタル化に伴い適正支給が進んでいますが、月80時間近い激務をこなしたとしても、翌月の給与明細を見て「心身を削って検事を支えた対価として、手取り数十万円のプラスは本当に見合っているのか」と虚脱感を覚える若手職員は少なくありません。
結果として、検察事務官の激務と離職率の関係を見ると、全体の離職率そのものは国家公務員の平均値(1〜2%台)にとどまるものの、採用後3年以内の若手・中堅層における「燃え尽き症候群」や民間IT・コンサル業界への流出が目立ち始めています。過酷な夜間捜査や土日出勤の呼び出しに耐えうる強靭な体力と使命感がなければ、給与額だけでモチベーションを維持するのは容易ではありません。