メイクブラシを洗うにあたって最も犯しやすい失敗が、「すべてのブラシを一律の方法でゴシゴシ洗ってしまう」ことです。メイクブラシの原毛は大きく分けて「天然毛」と「人工毛(合成繊維)」の2種類が存在し、それぞれ物理的・化学的耐性が根本から異なります。
山羊(ヤギ)、灰リス、イタチ(コリンスキー)、馬などの天然毛は、人間の髪の毛と同じく表面に「キューティクル」を持っています。油分を適度に含まないと毛先がパサつき、切れ毛や枝毛の原因になります。そのため、脱脂力の強すぎるアルカリ性洗剤や熱湯の使用は厳禁です。天然毛を洗う際は、ぬるま湯(30〜35℃程度)に薄めた専用クリーナー、または刺激の少ない中性洗剤を使用し、短時間で撫でるように洗う配慮が求められます。
一方で、近年の人工毛はPBT(ポリブチレンテレフタレート)やタクロンなどを原料とし、ナイロン特有のゴワつきを克服した超極細加工が施されています。人工毛は薬品や摩擦に対する耐久性が高く、リキッドファンデーションやコンシーラーなど油分の強いコスメにも耐えられます。ただし、熱には弱いため熱湯消毒などは避け、中性洗剤でしっかりと油分を乳化させて洗い流す工程が不可欠です。毛の性質を理解せずに洗浄すると、高価なブラシが一瞬でゴワゴワの束になってしまいます。