トルコという国家を理解する第一歩は、その特異な地理的配置を知ることにあります。トルコの総国土面積は約78万3,562平方キロメートル(日本の約2倍)ですが、そのうち約97%がアナトリア半島(小アジア)と呼ばれるアジア側に属し、ヨーロッパ側に位置するのはわずか約3%の東トラキア地方にすぎません。
この二つの大陸を物理的に切り裂いているのが、イスタンブールの市街地を南北に貫くボスポラス海峡です。黒海とマルマラ海を結ぶ全長約30キロメートル、最も狭い場所では川幅わずか約700メートルのこの細い水路こそが、古くからアジアとヨーロッパを分かつ厳格な境界線と定義されてきました。
ここで多くの人が勘違いしやすいのが首都の存在です。「トルコの首都はイスタンブール」と思われがちですが、国家の中枢であるトルコ首都アンカラの位置と役割は完全にアジア側にあります。1923年の共和国建国時、初代大統領ムスタファ・ケマル・アタテュルクは、列強の海軍に包囲されやすい旧オスマン帝国の古都イスタンブールを離れ、防衛に適したアナトリア中央の内陸都市アンカラへ遷都しました。つまり、政治の中心地も国土の大半も、地理的には完全にアジア大陸に根を下ろしているのです。