ネット上の情報や要約動画を通じて論理的思考を学んだ学習者が最も陥りやすい誤解が、「MECEに整理し、筋道さえ通っていれば人は動く」という短絡的な思い込みです。心理学の観点から見れば、人間は純粋な論理の正しさだけで意思決定を行う生き物ではありません。むしろ、正論で逃げ道を塞がれた相手は心理的防衛反応を起こし、かえって反発や頑なな態度を強めることになります。
ネット上では「論理的=冷徹な理詰め」と混同されがちですが、第一線で活躍するプロフェッショナルが用いる論理的思考とは、相手の関心や不安を先回りして解消するための「思いやりの構造化」に他なりません。前提となる事実認識にズレがないかを確かめるクリティカルシンキングの視点を欠いたまま形式論理だけを展開すれば、いわゆる「理詰めハラスメント」に陥る危険を孕んでいます。
また、「独学でロジカルシンキングを極めるには難解な学術書から読まねばならない」という風潮も危険な誤解です。抽象度の高すぎる理論書を消化不良のまま抱え込むよりも、まずは自分の頭の中にある漠然とした感情や思考をA4用紙に書き殴り、それを客観的に眺めるという泥臭いトレーニングを重ねた方が、現場での瞬発力は確実に向上します。