『ナポレオンの戴冠式』描かれた嘘と真相!自ら戴冠した理由と2枚の謎

『ナポレオンの戴冠式』描かれた嘘と真相!自ら戴冠した理由と2枚の謎

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美術ファンの間で非常によく知られている事実として、『ナポレオンの戴冠式』にはダヴィッド自身が描いた正真正銘の油彩原画が2枚存在するという点があります。1枚はパリのルーヴル美術館、そしてもう1枚はヴェルサイユ宮殿の「戴冠の間」に展示されています。

2枚目が制作された理由は、1815年のナポレオン失脚に端を発します。ナポレオン体制下で宮廷画家として権勢を振るったダヴィッドは、王政復帰後のフランスを追われ、ベルギーのブリュッセルへと亡命を余儀なくされました。失意の亡命先で、アメリカ人実業家のグループから「戴冠式の複製画を描いてほしい」という依頼を受けたダヴィッドは、自らの記憶と下絵を頼りに、1816年から1822年にかけてほぼ同寸法の2枚目を完成させたのです。

この2枚の作品には、制作年代の違いだけでなく、画家の意図的な遊び心と人間関係が反映された決定的な相違点が存在します。両者の特徴を比較データとして整理しました。

項目詳細・数値データ一般的な基準・相場編集部の見解・評価所蔵場所と展示環境ルーヴル美術館(ドゥノン翼) / ヴェルサイユ宮殿(戴冠の間)世界トップクラスの国立美術館群ルーヴル版は『モナ・リザ』『民衆を導く自由の女神』と同室の至宝。ヴェルサイユ版は宮殿の豪壮な歴史空間と調和。制作年と制作背景第1作:1805〜1807年(皇帝直接発注)
第2作:1816〜1822年(亡命期制作)通常の大作歴史画の制作期間:2〜3年第1作は帝国最高潮期の国家事業。第2作は帝国崩壊後、画家がかつての栄光を偲んで描いた回顧作。決定的な違い(ドレスの色)ナポレオンの妹ポーリーヌの衣装色:
ルーヴル版=白色(シルバー系)
ヴェルサイユ版=鮮烈なピンク色完全な同一模写が基本ダヴィッドが密かに心を寄せていたとされる絶世の美女ポーリーヌを目立たせるための意図的なカラー変更。人物の筆致と陰影処理ルーヴル版:緻密で硬質な筆致
ヴェルサイユ版:やや柔らかく温かみのある色彩同一作者によるリメイク画の傾向差ヴェルサイユ版は画家の晩年特有の円熟味と、過去へのノスタルジーが色濃く反映されている。キャンバスの寸法比較ルーヴル版:621cm × 979cm
ヴェルサイユ版:610cm × 971cm歴史画として世界最大級わずかにヴェルサイユ版が小さいものの、鑑賞時の威圧感とスケールは両者とも互角。

ヴェルサイユ宮殿を訪れた際は、画面左手後方に立つナポレオンの姉妹たちに注目してください。左から2番目に立つナポレオンのお気に入りの妹、ポーリーヌ・ボナパルトのドレスだけが、他の姉妹の白いドレスと異なり、鮮やかなピンク色で塗られています。当時社交界随一の美貌を誇り、奔放な性格で知られたポーリーヌに対するダヴィッドの個人的な敬慕が、この1点に注ぎ込まれているのです。

伊藤 翔太
著者

伊藤 翔太

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。