日常の会話やネットの情報空間において、まことしやかに語られている俗説の数々。しかし、そこには生理学的な盲点と誤解が数多く潜んでいます。
最大の誤解は、前述した「しゃぶしゃぶを食べていれば太らない」という過信です。湯通しによって表面の脂質が落ちるのは事実ですが、それによって抜ける脂質は全体のおよそ1割から1.5割程度に過ぎません。残りの8割以上の脂質は肉の筋繊維内に保持されたまま口に入ります。さらに問題なのが「シメの雑炊や麺類」です。鍋の湯の中には、これまで何枚もの肉から溶け出した脂質やプリン体が濃厚に浮遊しています。その残り汁にご飯やうどんを投入してスープを吸わせれば、湯通しで落としたはずの脂質を濃縮して丸ごと胃袋へ回収することになり、結果としてすき焼き以上の脂質過多を引き起こします。
もう一つの盲点は、すき焼きにおける「白滝と肉の硬化現象」に関する都市伝説です。かつて「白滝(糸こんにゃく)に含まれる石灰(カルシウム)が肉を硬くするため、肉の隣に置いてはいけない」と広く信じられていました。しかし、一般財団法人日本こんにゃく協会の検証実験などにより、白滝の近接による肉の硬化には統計的な有意差がないことが科学的に証明されています。現代の高品質な精肉とこんにゃく製品においては、配置に過剰な神経質になる必要はまったくありません。