岩井氏が遺した数多くの著書は、当事者としての生々しい証言と、冷徹な歴史家としての視線が高度に融合した名著ばかりです。
特攻隊員の内面と死の強制を問い直した『特攻隊と天皇制』や、自らの原点を克明に刻んだ『回天の遺書』、さらには近代政治史のスタンダードとなった『西園寺公望―最後の元老』(岩波新書)など、その論考は今なお色褪せない価値を持っています。
特攻を「純粋な愛国心の美談」として消費することを厳しく戒め、国家体制が個人の尊厳を押し潰していくプロセスの冷酷さを活字として残した仕事は、歴史修正主義に対する強力な防波堤となっています。