昭和から平成にかけてテレビがメディアの主役に躍り出ると、彼女は茶の間を揺さぶるヒューマンドラマの数々で前人未到の演技を披露した。山田太一が手がけた伝説的ドラマ『岸辺のアルバム』では、郊外の中流家庭で孤独と情動に揺れる主婦の心理を鋭く表現し、従来のテレビドラマの概念を根底から覆した。
また向田邦子脚本の傑作『阿修羅のごとく』では、穏やかな微笑みの裏に複雑な葛藤や女の本音を隠し持つ長女役を怪演。NHKのテレビドラマ史に燦然と輝くこれらの作品で、彼女は単なる「理想の優しい母親」というステレオタイプを脱ぎ捨て、人間の愛おしさと業を赤裸々に浮き彫りにした。その表現力は、日本のテレビ史における決定的な転換点となったのである。