ザクッとした快音を響かせる衣の食感。肉汁が溢れ出すジューシーな断面。一口噛み砕いた瞬間の体験を決定づけるのは、衣の素材と仕込みのプロセスだ。
決定的な差異の筆頭に挙げられるのが、使用する粉の種類である。竜田揚げは片栗粉100%で仕立てるのが鉄則であり、油に入れることで片栗粉が水分を吸い、白い粉を吹いたようなサクサクとした独特の薄衣を形成する。これに対し、唐揚げは小麦粉単体、あるいは小麦粉と片栗粉をブレンドしたものが主流だ。小麦粉特有のグルテンがしっとりとしたコクと芳醇な香ばしさを生み出し、肉の旨味を強力に閉じ面から守り抜く。
下味の染み込ませ方にも決定的な文脈の違いがある。伝統的な和食の調理法に由来する竜田揚げは、揚げた後には何もつけずそのまま食べることを前提とし、醤油や酒、生姜などの調味料を肉の奥までしっかりと染み込ませる。揚げ物料理として進化を遂げた唐揚げは、塩味やスパイス、後付けのタレに至るまで多彩なバリエーションを受け入れる柔軟性を持っている。