レイスウェイトの理論を日本で独自に深化させ、実用化のレベルまで引き上げた伝説の技術者がいる。旧日本国有鉄道(国鉄)でリニア開発を率いた京谷好泰だ。彼のチームが直面した最大の障壁は、いかにして車両を浮かすほどの強力な磁力を軽量なシステムで生み出すかという難題だった。
京谷が選んだ答えは、当時としては無謀とも言われた「超電導」の採用だった。特定のマテリアルを極低温まで冷却すると電気抵抗が完全にゼロになる現象だ。周囲が常電導磁石での開発を進める中、京谷は超電導でなければ時速500kmでの浮上走行は不可能だと見抜いていた。宮崎実験線での泥臭い試行錯誤、度重なる失敗、そして国鉄分割民営化に伴う事業の引き継ぎ。その情熱と技術的遺産は、鉄道総合技術研究所(鉄道総研)やJR東海へと脈々と受け継がれていった。