行政が所有する歴史的建造物の活用例として、名古屋市による運営体制は極めて先進的だ。多くの重要文化財が有料公開されるなか、あえて入場無料のスタンスを貫くことで、地域住民の日常的な憩いの場としても、国内外の旅行者の周遊スポットとしても機能させている。観光業における滞在時間を引き上げ、街全体の回遊性を高めるハブとしての役割を果たしているのだ。
館内には市民が利用できる会議室やギャラリースペース、静かに珈琲を味わえる喫茶室も併設されている。公文書館としての一次資料保管機能を維持しつつ、人々の交流が生まれる動的なスペースとして解放する。この「開かれた文化財」のスタイルこそが、名古屋市市政資料館が長年にわたり地域に深く愛され続けている最大の理由だろう。