イエスタデイ・ワンス・モアの真相|カレンの歌声と悲劇が生んだ名曲

イエスタデイ・ワンス・モアの真相|カレンの歌声と悲劇が生んだ名曲

イエスタデイ・ワンス・モアの真相|カレンの歌声と悲劇が生んだ名曲を徹底追究! 知っておきたい トピックの裏側を凝縮して配信します。

なぜカレンの歌声は、スピーカーから流れた瞬間、まるで耳元で語りかけられているかのような錯覚を起こさせるのでしょうか。その秘密は、カレン固有の音域の深さと、リチャードが施した音響的アプローチに隠されています。

多くの女性ポップスシンガーが高音域の華やかさで勝負する中、カレン・カーペンターの歌声と魅力は、その豊かなアルトボイス、とりわけ豊かな胸声(チェストボイス)にありました。リチャードは生前の特番インタビューで「彼女の本当の美しさは、D3からC5付近の低中音域で最も顕著に現れる」と証言しています。レコーディング現場では、当時の技術として非常に先駆的だったマイクへの近接配置(クローズ・マイキング)を徹底し、息づかいの微細なニュアンスまでダイレクトに捉えました。倍音成分をたっぷり含んだその低音は、温かく包み込むような質感を醸し出し、聴き手の孤独感を溶かしていきます。

さらに、楽曲をアカデミックに解剖すると、イエスタデイ・ワンス・モアコード進行と楽曲分析におけるリチャードの天才的な構築美が浮かび上がります。

本作の基本キーはEメジャーですが、イントロの静謐なピアノからヴァースに入ると、ベースラインが美しいステップワイズ(順次進行)を描いて下降していきます。「E - G#m/D# - C#m - E/B - A - B - E」といった循環コードの中で、安らぎと切なさを同時に演出するメジャーセブンスコードや分数コードが効果的に散りばめられています。サビの「Every Sha-la-la-la / Every Wo-o-wo-o」へと到達する瞬間、曲調は一気に視界が開けるような開放感をもたらしますが、メロディの裏で鳴るベース音とストリングスはわずかに哀愁を帯びたマイナー感を残しています。明るいポップスの衣をまといながら、心の奥に沈み込むような叙情性を同居させるこの作曲設計こそが、半世紀にわたり分析され続けるマスターピースの真骨頂です。

鈴木 陽菜
著者

鈴木 陽菜

暮らしを豊かにする便利アイテムや時短アイデアを中心に、実用的な情報をお届けします。