戦前の旧満州国政府が支配した地域は、広大な農地を抱え、大豆や小麦などの穀物資源が豊富な土地であった。しかし、第二次世界大戦の終結とともに帝国の夢は崩壊。敗戦直後の日本および東アジア全体を襲ったのは、苛烈な食糧難だった。こうした混乱期を経て発展した東アジアの食文化史を振り返ると、極限状態からの脱却を目指す人々の知恵が、新たな食品開発の原動力となったことがわかる。
満州での体験や終戦直後の混乱を生き抜いた人々が日本へ引き揚げ、復興の現場で汗を流すなかで、「手軽に安価で栄養のあるものを食べさせたい」という切実な願いが醸成されていった。都市の闇市に佇む屋台の行列を見つめたある起業家の眼光が、のちの食品流通に革命を起こすことになる。