作者である青山剛昌が描き出す世界観には、常に緻密なロジックと実在の科学へのリスペクトが息づいている。追跡メガネの発想の原点を取材すると、1980年代後半から1990年代初頭にかけて出願された軍事用ヘッドアップディスプレイ(HUD)や、初期のアマチュア無線用方向探索技術(ARDF)の特許出願書類に行き当たる。
青山氏はこれら最先端の特許情報を貪欲にリサーチし、自らの得意とする本格派の推理・ミステリーのプロットへと巧みに落とし込んだ。ロジカルなトリック解明の過程でガジェットが単なる「打ち出の小槌」として機能するのではなく、通信範囲の制限やバッテリー切れといったリアルな制約がサスペンスを生み出す要素として計算し尽くされている。この緻密な計算こそが、ミステリーファンを唸らせ続ける最大の理由だ。