ホキ美術館を語る上で、まず触れずにはいられないのがその破格の建築だ。緑豊かな「昭和の森」に隣接するなだらかな傾斜地。そこに横たわるチューブ状の鋼板構造物は、先端に向かうにつれて宙へと競り出し、先端部では実に約30メートルもの長さにわたって柱を一本も使わずに空中に浮いている。
この世界最大級の片持ち梁(カンチレバー)構造を実現したのは、組織設計の雄である株式会社日建設計のチーフデザインオフィサー・山梨知彦氏率いるチームだ。重力に逆らうかのようなダイナミックな外観は、単なる視覚的インパクトを狙ったものではない。内部に入ると、継ぎ目のない緩やかなカーブを描く細長い回廊がどこまでも続く。鑑賞者はまるで絵画の森を散策するように、歩を進めるごとに次なる傑作と自然に出会えるよう設計されている。
床には足腰への負担を極限まで減らすゴムチップ素材が敷き詰められ、天井には絵画本来の色彩を忠実に再現する特殊な高演色性LED照明が埋め込まれている。絵画を邪魔する柱も目障りな影も一切存在しない。建築そのものが、究極の「絵画鑑賞装置」として機能しているのだ。