シンガーソングライターとしてソニー・ミュージックレーベルズへ進出し、国民的ポップスターとなった後も、「ハチ」という怪物は米津玄師の内部で眠っていたわけではない。むしろ、そのDNAはより洗練された形でメインストリームのど真ん中に牙を剥いている。
象徴的な例が、世界的なバイラル現象を巻き起こしたTVアニメ『チェンソーマン』のオープニングテーマ『KICK BACK』だ。目まぐるしく変化する拍子、耳をつんざく歪んだベースライン、暴力的なカットアップ手法。それはかつてハチがVOCALOIDを通じて実験を繰り返していたアプローチそのものであり、巨大なメジャーフィールドへの見事な逆襲劇であった。名義が変わろうとも、根底に流れる「異形への愛着」と「大衆への求心力」は完全に地続きなのだ。