「おしどり夫婦」という言葉が定着しているため、多くの人はオシドリが生涯同じ相手と添い遂げる一夫一婦制の代表格だと信じ込んでいます。しかし、鳥類生態学における観察記録によれば、オシドリのペア関係はわずか数カ月間の「期間限定」に過ぎません。
秋から冬にかけて越冬地に集まったオシドリたちは、翌春の繁殖に向けて求愛ディスプレイを展開します。激しいアピール合戦を勝ち抜いたオスとメスがカップルを結成しますが、その絆が続くのは産卵期までです。メスが樹洞などに産卵を終えると、オスは子育てに一切関与することなく巣を去り、翌年の繁殖期にはまた全く別の個体とペアを形成します。
動物行動学の研究者らは、この行動を「シリアル・モノガミー(連続的一夫一婦制)」と定義しています。毎年異なる遺伝子を組み合わせることで、感染症への耐性や環境適応力を高め、種の絶滅リスクを分散させる生存戦略です。私たちが美談として語る「永遠の愛」とは対照的に、自然界のオシドリは極めてドライかつ機能的な繁殖システムを構築しています。