肥満外来の臨床データや現場での行動観察調査によると、太りやすい人には日常生活の中で無意識に行っている共通の行動パターンが存在します。本人は「大して食べていない」と自覚していても、日々の行動ログを精緻に追跡すると、明らかなカロリーオーバーや代謝を下げる行動が浮き彫りになります。
代表的な共通点の一つが「早食い」です。満腹中枢を刺激するレプチンというホルモンが分泌されるまでには、食事開始から約15分〜20分を要します。しかし、肥満傾向にある人の約7割が10分未満で食事を終えており、満腹感を得る前に必要以上のエネルギーを摂取してしまいます。さらに、咀嚼回数が少ないことで消化器官への負担が増加し、食後の消費エネルギー(食事誘発性熱産生:DIT)も低下します。
また、水分補給の選択肢にも決定的な違いが見られます。痩せ型の人が水や無糖のお茶を好むのに対し、太りやすい人は清涼飲料水やカフェラテ、エナジードリンクなど、「液体の糖質」を無意識に摂取する傾向が顕著です。液体に含まれる単糖類や果糖ブドウ糖液糖は素早く小腸で吸収され、急激な血糖値上昇を引き起こすため、体脂肪として蓄積されやすくなります。
加えて、座りっぱなしの生活環境やエスカレーターの無意識な利用など、非運動性身体活動熱産生(NEAT)の低さも目立ちます。ジムに通うといった特別な運動以前に、日常のこまめな身体活動量が不足していることが、消費エネルギーのベースラインを大きく押し下げています。