海老の殻に含まれるアスタキサンチンという色素は、普段はタンパク質と結合して青黒い色を呈していますが、加熱によってタンパク質が変性すると遊離して本来の鮮やかな赤色へ変化します。ところが、「煮汁に長時間漬けていたら、せっかくの赤い殻が茶色くくすんでしまった」という経験を持つ方は少なくありません。
調味液の醤油色が殻に沈着してくすむのを防ぎ、澄み渡る赤色を維持するために、日本料理界で受け継がれている秘技が「別冷まし(べつざまし)」です。これは、加熱直後の海老を速やかに煮汁から引き上げて氷水を当てたバット上で急冷し、残った煮汁も別のボウルに移して氷水で一気に冷やす手法を指します。
熱い煮汁の中に食材を放置すると、余熱で火が通り過ぎるだけでなく、色素の酸化と煮汁の濁りが同時に進行します。海老本体と煮汁を別々に完全に冷却してから再び合わせることで、驚くほど濁りのない紅白色を保ちながら、中までしっかりと味を浸透させることが可能になります。まさに海老の色を鮮やかに保つ裏技であり、プロが教える海老煮物の評判技として料理人の間では常識となっています。