映画の描写では力いっぱいに握りしめた「グー(握り拳)」で胸を殴りつける姿が描かれますが、実際のゴリラを観察するとゴリラドラミング手のひらの形はまったく異なります。ゴリラは決して握り拳では胸を叩きません。手のひらを軽く丸め、水を手ですくうような「お椀型(カッピング)」にして胸を素早く交互に叩きます。
握り拳で体重150〜200kg超の屈強な体を殴打すれば、自分自身の胸骨や筋肉を痛めてしまいます。さらに、グーでは「ドスドス」という鈍い打撲音にしかならず、遠くまで音が届きません。手のひらをくぼませて空気を包み込むように叩くことで、胸腔や喉頭嚢(こうとうのう)と共鳴し、太鼓のように乾いたゴリラドラミング音ポコポコという独特の重低音が生み出されます。
ドイツのマックス・プランク進化人類学研究所が発表した音響分析データによると、このドラミング音は鬱蒼とした密林であっても約1キロメートル以上先まで正確に届くことが確認されています。体格が大きく胸板が厚い個体ほど低い周波数の音を響かせるため、音を聞いた周囲のオスは姿を見る前に「相手がどれほど巨大か」を把握し、勝ち目のない無謀な戦いを回避しています。