ネット上のレシピで散見される最大の誤解が、「手軽にとろみを出すために水溶き片栗粉を加える」という手法です。あんかけ天丼を目指すのであれば問題ありませんが、名店のようなタレを目指す場合、片栗粉の使用は推奨されません。
片栗粉による糊化(こか)は水分を抱え込むため、天ぷらの衣に触れた瞬間に衣の水分移行を早め、サクサクとした食感を急速に損なわせてベチャつかせる原因になります。
正しい天丼のタレとろみの出し方は、以下の2通りの物理変化を利用します。
・糖の濃縮による粘性:砂糖とみりんの糖分を弱火でじっくり煮詰め、水分を飛ばすことで自然な粘りを得る。
・水飴の添加:デキストリンや麦芽糖を主成分とする水飴を加えることで、温度低下とともに自然なとろみと強い照りを形成する。
煮詰めの見極め方は「泡の大きさ」です。加熱初期の大きな泡から、全体が小さく粘りのある細かい泡に変化し、ヘラで鍋底をなぞったときに一瞬底が見える程度で火を止めます。「少しさらさらしているかな」と感じる程度で火を止めるのが肝要です。糖分を多く含む液体は、冷める過程で粘度が約1.5〜2倍に上昇するため、鍋の中でドロドロになるまで煮詰めると冷めた際に固まりすぎてしまいます。