タイの伝統衣装を総称する「チュット・タイ」ですが、現在目にする様式の多くは古代からそのまま受け継がれたものではなく、1960年代にシリキット前王妃(現ラーマ10世の母)が外遊を機に体系化した「チュット・タイ・プララーチャニヨム(王室公認タイ衣装)」にルーツを持ちます。西洋の立体裁断技術とタイ伝統の手織り絹織物(タイシルク)を融合させ、公式儀礼の場にふさわしい8つの女性用基本スタイルが確立されました。
数ある種類の中でも、観光客やタイ現地の人々に最も親しまれているのが「タイ民族衣装 チャクリー」です。片方の肩を露出し、胸元から床へと優美に流れる帯状の布「サバー(Sbai)」を纏うスタイルで、タイの伝統美を最も華やかに表現した王道のデザインです。金糸やビーズ刺繍が施されたサバーと、プリーツを寄せた巻きスカート「パシン」の組み合わせは、寺院の仏塔を背景にした際に息をのむようなコントラストを生み出します。
一方、格式の面で頂点に位置づけられるのが「タイ民族衣装 シヴァライ」です。長袖のブラウスの上に豪華なサバーを重ね着する重厚な仕立てで、主に王室の公式晩餐会や宮廷儀礼で着用されます。その格調の高さから、現代タイにおける「タイ民族衣装 結婚式 ドレス」としても圧倒的な人気を誇り、新婦の気品を最大限に引き立てる最高峰の礼装として重宝されています。
中央の宮廷文化とは対照的に、地方独自の素朴な風土に根差した衣装も見逃せません。特にタイ北部チェンマイやプレー県に伝わる「タイ北部 伝統衣装 モーホーム」は、天然の藍染めコットンで作られた素朴な丸首シャツであり、吸湿性と通気性に優れた日常着として現地の人々の暮らしに息づいています。宮廷の煌びやかさとは異なる、手仕事の温もりを感じさせる伝統のあり方として根強い支持を集めています。