私たちの肉体は、21世紀のハイテク社会に最適化されているわけではない。その構造の根幹は、約20万年前の旧石器時代、サバンナで狩猟採集生活を送っていた仕様のままである。この「身体の進化速度」と「文明・環境の変化速度」の激しいズレこそが、現代人を苦しめる様々な疾患の根本原因(進化的不適応)となっている。
① 骨格と臓器に残された直立二足歩行の代償
四足歩行動物の背骨は本来「吊り橋」の構造をしている。それを無理やり垂直に立てて「柱」として使っているため、現代人の腰椎には常に過剰な圧縮応力がかかる。日本国内でも患者数が推定2,800万人にのぼる慢性腰痛や椎間板ヘルニアは、直立歩行を選んだ人類宿命の構造欠陥である。また、直立によって重力が下方向にかかるため、内臓下垂や痔、難産といったトラブルも四足獣には見られない固有の弱点だ。
② 親知らず・虫歯・アゴの小型化
火の使用と農耕の開始、そして現代の高度に加工された柔らかい食事により、咀嚼筋と顎骨は急速に縮小した。しかし、歯の生える本数(遺伝的プログラム)はそのまま残されたため、現代人の口腔内では親知らず(第三大臼歯)が正常に生えるスペースがなくなり、埋伏や歯並びの乱れを引き起こしている。
③ 肥満・糖尿病と「節約遺伝子」のジレンマ
飢餓が日常茶飯事だった太古の環境では、摂取したわずかな糖分や脂質を効率よく体脂肪として蓄積できる個体こそが生き残った。この「節約遺伝子」を持つ肉体に、24時間いつでも超加工食品や糖質が手に入る飽食環境が重なった結果、インスリン抵抗性、生活習慣病、メタボリックシンドロームが爆発的に増加した。現代人の体は、飢餓には滅法強いが、過剰な糖質を処理する防御システムを持ち合わせていない。