すみっコぐらしの最大の魅力は、愛くるしいパステルカラーのビジュアルの裏に潜む「哀愁とリアルな挫折」です。原作者の横溝友里氏が学生時代にノートの隅に描いた落書きから誕生した彼らは、全員が何かしらの「生きづらさ」を抱えています。
なかでもファンの涙を誘うのが「とかげ」の正体と母子の絆です。母親である巨大な恐竜「スミッシー」は、遠い湖の底でひっそりと暮らしています。とかげは母親が恋しくてたまりませんが、自分が恐竜だとバレてしまうと人間たちに捕獲され、お母さんにも危険が及ぶかもしれないという恐怖から、決して正体を明かせません。絵本や劇場版で描かれる「年に一度の湖での密かな再会」のシーンでは、言葉を交わさずとも通じ合う母子の姿に、多くの大人が涙を流しました。
また、「ぺんぎん?」のアイデンティティクライシスも深刻です。全身が緑色で、昔は頭に皿があったような記憶がかすかに残っているという設定は、どう見ても日本の妖怪「河童」を想起させます。公式図鑑を読んでも自分の正体が分からず、後述する本物のペンギン「ぺんぎん(本物)」が目の前に現れたとき、その完璧なペンギンらしさに劣等感を抱きながらも、どこかで受け入れようとする姿は、自己同一性に悩む現代人の縮図と言えます。
さらに「とんかつ」と「えびふらいのしっぽ」が抱く「食べ残されたトラウマ」も独特の哀愁を放ちます。料理としての本来の目的(誰かに美味しく食べてもらうこと)を果たせなかった彼らは、自らにソースやからしを塗り、再び美味しく見えるよう努力を重ねています。「不要なものとして捨てられた」という深い傷を持つからこそ、2匹は言葉を超えた絶対的な信頼関係で結ばれているのです。