結論から明記すると、ボカロP「ハチ」の正体は米津玄師その人であり、完全な同一人物です。2009年5月に初音ミクを用いた楽曲『お姫様は電子音で眠る』をニコニコ動画に初投稿して以降、ハチは独創的なコード進行と中毒性の高いリフレイン、自作のアニメーションMVによって瞬く間にトップクリエイターへと登りつめました。
では、なぜ彼は絶頂期にハチとしての活動をペースダウンさせ、本名でのソロ活動へと舵を切ったのか。当時のインタビューや手記で本人が明かした米津玄師とハチの名義の違いと移行の理由には、クリエイターとしての強烈な危機感と肉体性への渇望がありました。
ボーカロイドは作者の容姿や年齢、パーソナリティを覆い隠す「無機質なアバター」として機能します。ハチ名義での成功を通じて、彼は「ボーカロイドという強固なプラットフォームの力に依存しているのではないか」「キャラクターの向こう側にいる自分自身の生身の表現が届いていないのではないか」という葛藤を抱くようになりました。
「自分の肉声で、逃げ場のない状態で音楽を届けたい」という切実な欲求が芽生えた結果、2012年に1stアルバム『diorama』をリリースし、本名である米津玄師名義でのメジャーシーン進出を宣言したのです。