文化地理学的な視点で注目すべきなのが、おにぎりの地域差と関東関西の呼び方です。民間調査機関や国語研究所の過去の調査によれば、かつて東日本では「おにぎり」、西日本では「おむすび」と呼ぶ傾向が強く見られました。
この地域差は形状や海苔の仕様にも明確に現れています。関東地方では伝統的に「三角型」に握り、パリッとした「焼き海苔」を全面または帯状に巻くのが主流です。これに対して関西地方では、弁当箱に収まりやすく食べやすい「俵型」が好まれ、海苔も甘辛い「味付け海苔」を巻く家庭が多いという明確な食文化の境界が存在します。
関西で味付け海苔が定着した理由には、明治時代に創業した老舗海苔店が宮内省御用達として開発した高級味付け海苔が商人文化の中で贈答品として広まり、一般家庭の朝食や弁当へと浸透したという背景があります。流通の広域化によって現代では東西の垣根は低くなっているものの、家庭内での原体験には依然として地域ごとの固有差が息づいています。