制度を利用した家族が最も強い後悔を抱く要因の一つが、成年後見人報酬トラブルです。専門職後見人への報酬額は、当事者同士の話し合いで決まるのではなく、家庭裁判所の審判(裁判官の判断)によって一方的に決定されます。 基本報酬の目安は、本人の管理財産額に応じて明確な相場が形成されています。
- 管理財産額が1,000万円以下:月額2万円程度(年間約24万円)
- 管理財産額が1,000万円超〜5,000万円以下:月額3万〜4万円程度(年間約36万〜48万円)
- 管理財産額が5,000万円超:月額5万〜6万円程度(年間約60万〜72万円)
これに加えて、不動産の売却、遺産分割協議の成立、大規模な施設入所契約などをまとめた場合には、数十万〜数百万円規模の「付加報酬」が別途加算されます。 仮に親の預金が3,000万円あり、80歳で後見人が就任して95歳まで生きたと仮定すると、基本報酬(月額4万円×12ヶ月×15年)だけで合計720万円もの現金が、本人の資産から合法的に専門職の口座へと吸い上げられていきます。「親の介護費用のために貯めてきた虎の子の預金が、何もしない士業の維持費に消えていく」という不満がネット上で溢れかえるのも無理はありません。 さらに制度の信頼を決定的に失墜させたのが、かつて社会問題化した成年後見人横領不祥事の歴史です。最高裁判所の公表資料によると、後見人による不正横領被害は統計を取り始めた時期から累積で数百億円規模に達しており、その中には本来財産を守るべき立場にある弁護士や司法書士による巨額横領が多数含まれていました。 不祥事の発覚後、最高裁と家裁は「後見制度支援信託」や「後見支援預金」といった、日常的に使う額以外の財産を別口座に隔離する仕組みを導入しました。しかし、これにより手続きはさらに煩雑化し、家族にとってはいよいよ「親の財産に触ることすら許されない」という三重苦を強いられる結果となっています。