SNSやネットの口コミ掲示板で時折見かける「紅ズワイガニは身がスカスカで水っぽくてまずい」という声。この悪評が生まれてしまった背景には、紅ズワイガニ特有の生物学的性質と、過去の流通・保存技術の限界が関係しています。
深海1,000mを超える高水圧・低水温下で生きる紅ズワイガニは、筋肉組織の中に約85%もの水分を蓄えています。この高い水分量こそがみずみずしい食感とジューシーさの源であると同時に、最大の弱点でもあります。水揚げ後の鮮度低下が非常に早く、加熱や冷凍の工程でドリップ(旨味を含んだ水分)が流れ出してしまうと、身が極端に縮んでパサつき、文字通り「身入りの悪いスカスカなカニ」になってしまいます。
かつて格安食べ放題バイキングや安価な冷凍パックで流通していた粗悪な紅ズワイガニを口にし、その水っぽさに失望した消費者の体験談が「紅ズワイ=まずい」という固定観念を形成してしまいました。しかし、港町で水揚げ直後に即座に釜茹でされた「浜茹で」の新鮮な紅ズワイガニを食べた人は、一様にその甘みの強さに驚愕します。アミノ酸含有量の分析でも、紅ズワイガニは本ズワイガニに勝るとも劣らない強い甘み成分を有していることが実証されており、確かな鮮度管理さえされていれば極上の美味を味わえるのが真実です。