調理前に誰もが抱く最大の疑問は、「たらの芽のトゲはそのまま食べられるのか」という点です。結論から言えば、若芽の先端にある白っぽくて柔らかい産毛のようなトゲであれば、天ぷらなどの高温加熱によって細胞壁が脆くなり、そのまま口に運んでも違和感なく食べられます。しかし、赤みを帯びて木質化が始まっている黒褐色の硬いトゲは、どれほど長時間揚げたり茹でたりしても柔らかくなることはありません。
硬いトゲをそのまま咀嚼した場合、歯茎や舌、上あごの粘膜にチクリと突き刺さるだけでなく、飲み込む際に喉の粘膜を傷つけて炎症を起こす事例が報告されています。小児や高齢者がいる家庭では、誤嚥や粘膜損傷のリスクが跳ね上がるため、硬化しているトゲを無処理で食卓に出す行為は極めて危険です。
一方で、気になるタラの芽のトゲの毒の有無については、ウコギ科タラノキ属の植物生理学上、ウルシのような接触皮膚炎を引き起こす毒成分や、毒針のような毒嚢(どくのう)は一切存在しません。トゲに触れて指先が赤く腫れたりズキズキ痛んだりするのは、毒の作用ではなく、トゲが皮膚の真皮層深くまで侵入したことによる物理的刺激と、植物表面に付着していた土壌細菌が傷口に入り込んだことによる局所的な免疫反応です。したがって、トゲを誤って口にしてしまっても中毒を起こす心配はありませんが、物理的な刺傷を防ぐための適切な下処理は必須となります。