なぜここまで明確な差が生じるのか。その深層には、生体微生物学における「菌交代現象(ディスバイオーシス)」という深刻な問題が存在します。
健常な人の口内や喉には、数百種類・数百億個に及ぶ常在菌が生息しています。これらの細菌叢は、互いに縄張りを争いながら絶妙な生態系バランスを構築しており、レンサ球菌などの善玉常在菌は、外来の病原菌が粘膜に取り付くのを物理的に遮断したり、抗菌ペプチドを分泌して悪質ウイルスの定着を防ぐ役割を担っています。
ここにポビドンヨードのような広範囲殺菌薬を日常的に投入すると、悪玉菌だけでなく、喉の砦として機能していた有益な常在菌まで一網打尽に死滅してしまいます。焼け野原となった粘膜の上では、普段は常在菌に抑え込まれていた真菌(カンジダ菌など)や、薬剤への抵抗力を持つ特定の病原菌が急激に繁殖を始める「菌交代症」の温床となり得ます。毎日欠かさず薬用うがいを続けている人ほど、皮肉にも感染に対する抵抗力が脆弱化していく構造がここにあります。