コーヒーを語る上で避けて通れないのが、シングルオリジンとの違いやストレートコーヒー比較の視点です。ストレートコーヒーが「特定の国や地域で収穫された単一銘柄」を指すのに対し、シングルオリジンはさらに農園単位や精製方法までトレーサビリティを特定したものを意味します。土地の風土(テロワール)がダイレクトに伝わるシングルオリジンはワインに近い楽しみ方ができる反面、収穫年やロットによるブレが大きく、飲み手を選ぶ鋭い酸味や癖を伴うことも珍しくありません。
それに対してブレンドは、オーケストラの合奏に例えられます。フルートの華やかな高音(華やかな酸味)とコントラバスの重低音(どっしりとしたコク)を指揮者たる焙煎士がまとめ上げ、聴き手にとって心地よい協和音を構築する行為に他なりません。
また、一般消費者の間で今なお根強く残るのがアメリカンコーヒーとの違いに対する誤解です。「ブレンドをお湯で薄めたものがアメリカンコーヒー」という認識が広く流通していますが、これは昭和の喫茶店文化で一部簡便に提供された歴史的背景が招いた誤謬にすぎません。本来のアメリカンは、浅煎りの豆を用いて軽やかに抽出したコーヒーを指し、ブレンドであるか単一品種であるかという配合区分とは本質的に次元が異なります。