試合後、DAZNの審判判定検証番組『Jリーグジャッジリプレイ』やJFA審判委員会のレフェリーブリーフィングにおいて、この場面は徹底的に検証されました。
公式見解および識者の分析から明らかになったのは、「競技規則の文面上の正当性」と「ピッチ上の納得感」の深い乖離でした。サッカー競技規則において、過剰な力を用いて相手競技者の頭部や顔面を手や腕で攻撃する行為は、極めて軽微な接触を除き「乱暴な行為(violent conduct)」として一発退場の対象となります。荒木主審の視野からは「倒れた後に相手の首元を強く突いた動作」が明確に捉えられたため、規則に忠実にレッドカードを出したという事実が確認されました。
しかし、最大の問題はVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)との連携プロトコルにありました。VARは「明白な間違い(Clear and Obvious Error)」がある場合にのみオンフィールドレビュー(OFR)を推奨できます。パトリック選手の手が首元に入った事実自体は映像に存在していたため、VAR側は「主審のレッドカード判定そのものが明白な間違いとは言えない」と判断し、介入を見送ったのです。直前の鈴木選手によるホールディングという原因が見落とされ、結果として生じた報復的動作だけが切り取られて処罰されるという、VAR運用の制度的死角が浮き彫りになった瞬間でした。