毒のリスクを抱えながらも、西日本の一部沿岸部、とりわけ長崎県の五島列島や三重県の志摩地方などでは、ハコフグは古くからハレの日のご馳走として親しまれてきました。その代表格が五島列島の郷土料理「かっとっぽ(かっとっぽ焼き)」です。
この料理の最大の特徴は、ハコフグ特有の骨格をそのまま調理器具として利用する点にあります。ハコフグの身体は六角形の硬い骨板が蜂の巣状に結合した強固な甲羅で覆われており、内臓を抜いてきれいに処理した腹側の切り口から、身と調味料を詰め込みます。
伝統的な味噌焼きレシピでは、丁寧に取り出された身に、麦味噌、酒、みりん、刻んだショウガや青ネギを合わせ、甲羅の中に戻して炭火や直火にかけます。耐熱性の高い甲羅が天然の鍋の役割を果たし、身から出る上質な出汁と味噌がグツグツと煮詰まることで、香ばしく濃厚な旨味が立ち込めます。地元の漁師や愛好家が「一度食べたら忘れられない白身の甘み」と絶賛する理由がここにあります。
ただし、かつては濃厚なコクを生み出すために肝(キモ)を混ぜ込むのが一般的でしたが、後述するパリトキシン様毒の危険性が学術的に広く認知された2026年代以降、正規の飲食店では徹底した衛生管理のもと、肝を使用しない安全な調理法へのシフトが進んでいます。