時透無一郎の直接的な死因は、黒死牟の血鬼術を伴う異形の三日月刃による「胴体両断」に伴う大量出血およびショック死です。左腕の切断、右脚の欠損、そして内臓諸共胴体を真っ二つにされるという、医学的・生物学的に即死してもおかしくない極限状態でした。
なぜ無一郎は、胴体を切断されてなお動くことができたのか。その原動力となったのが、「自分が死んでも、仲間が敵の頸を討ち取ってくれればいい」という完全な自己犠牲の覚悟です。彼は自身の死を確定事項として受け入れた瞬間、残された全神経を「握力」へと集中させました。
無一郎が引き起こした「赫刀(しゃくとう)」の万死の変色は、刀身に強烈な圧力をかけることで熱を帯びさせる現象です。日の呼吸の血を引く天才が、命が尽きる直前の筋力を限界突破させたことで生まれたこの赤き刃は、再生速度が異常を極めていた上弦の壱の体内を内側から灼き尽くしました。無一郎のこの一撃と、玄弥の放った血鬼術の拘束がなければ、どれほど悲鳴嶼や実弥が強大であろうと黒死牟を討ち破ることは不可能だったと断言できます。